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次世代インターネットを俯瞰する

2006年03月01日作成   1page  2page  3page 

第2部 : ネットワーク

次世代インターネットの基盤をなす技術はなんと言ってもネットワークでしょう。すでに、日本ではブロードバンドの普及率も上がり、ほとんどの家庭で高速のインターネットを楽しむことができるようになっています。インターネットで映画を見たり、デジカメで撮った写真をメールで送受信したりすることが気軽にできるようになりました。次世代インターネットではこうした高速ネットワークを基本とし、より生活が便利になるための技術が次々と生み出されています。ということで、第2部は「ネットワーク」です。ここでは少しだけ、その世界をのぞいてみることにしましょう。

IPv6

現在インターネットで使われているIPプロトコルはIPv4であり、32ビットのアドレス空間を持っています。このアドレス空間全てを使ってアドレスを割り振ることができるとすると「4,294,967,294(約43億)台」の端末を識別することができますが、世界人口約65億(2005年7月現在)の数と比較すると、一人一つのIPアドレスが割り当てられないことになります。
IPv4が制定された1981年頃はこの数で十分と考えられていたのですが、Windows95発売以降インターネットの利用が爆発的に増加したため、IPアドレスの枯渇という問題に直面しています。

IPアドレスを効率的に割り当てるCIDRやNATのアドレス変換技術で、枯渇問題はある程度先延ばしにできていますが、根本的な解決にはなっていません。

そこでIPv6が登場するのです。IPv6は128ビットの広大なアドレス空間を持っています。割り振ることができる端末の台数は、なんと「340,282,366,920,938,463,463,374,607,431,768,211,456台」6 なんです。これを世界人口65億の一人一人に対して割り振ったとしても一人当たりのIPアドレスの数は天文学的数になり、ほぼ無限のIPアドレスを使うことができるようになります(もちろん文字通りの無限ではありませんが、滅多なことではアドレスが枯渇するということはないでしょう)。


図7:既存のIPv4とIPv6 IPアドレス数の比較

そうなるとネットワーク端末はもとより、ネットワーク対応一般家電や、もし技術的に可能であればわたしたちの身の回りにある、ありとあらゆるものにIPアドレスを振ることが可能なのです。例えば筆者が良く使う蛍光ペンにIPアドレスが振られ、ネットワークにつながっていれば、インクの残りが少ないとアラートで知らせてくれるような仕組みを組み込むことにより、インクの残量をいつでも把握することができます。いざ使おうとしたら書けなかったということはなくなるでしょう。

またNATによるグローバルIPとプライベートIPのアドレス変換の仕組みが必要なくなり、ダイレクトなP2P通信が可能となります。これによりインターネット本来の双方向通信が実現することになります。
それ以外にもセキュリティや暗号化などもIPv4では別機能で実現されていたことが内蔵されていて、ネットワーク的にはとてもシンプルな通信を行うことができるのです。

すでに大手通信事業者では自前のネットワークをIPv6へと移行を進めています。また、一部のプロバイダも一般向けにIPv6のサービスを提供し始めているのです。携帯電話やクルマや家電など、ありとあらゆるものにIPアドレスが割り当てられ、ネットワークが当たり前のように私たちの生活になくてはならないものとなる時代が、もう、すぐそこまで来ているといえます。

電力線通信

インターネットに接続するためには、通常ADSLや携帯電話・PHSといった方法を使用します。これ、慣れない人には結構複雑です。しかし、次世代はもっと簡単に、便利に接続できるようになるかも知れません。それが電力線通信と呼ばれる(夢のような?)技術です。既に2005年10月4日電力線通信実用化が決まりました。

電力線通信(PLC)は、既設の電線に、電気の周波数50/60Hzよりも高い周波数の信号を乗せて行うデータ通信で、簡単に言うとコンセントにジャックを差し込むだけでインターネット通信ができてしまうという技術です。新しい技術のように思われるでしょうか。いいえ、実はそうではないのです。その昔、家庭用コンセントを利用したインターホンがあったのをご存知でしょうか?それこそが、まさにこの技術の応用なのです。仕組みとしては、アナログ電話線に高い周波数帯のデータ通信を行うADSLと似ていると言えるでしょう。


図8:電力線通信のもたらす世界(想像)あらゆる電化製品を簡単にインターネットに!

高速電力線通信(高速PLC)は家庭用の電力線に、電気とは別に周波数2MHz~30MHzの情報信号を流します。電気のコンセントにPCLモデムという特別なアダプタを接続し、数Mbps~数百Mbpsのデータ通信が可能になる技術です。コンセントはどこの家庭にも既にあるので新規にケーブルを引かなくてもインターネットを利用することができるようになるのです。そしてPLCモデム内蔵のエアコンやビデオが発売されれば、例えば携帯電話からビデオの番組予約や、エアコンのスイッチを入れることが簡単にできるようになるのです。

このように配線工事が不要になるため、インターネット家電の普及の礎と期待できる高速PCLですが、いくつかの問題があります。

1つには、日本の多くの場所で電柱に電線が張り巡らされているが、その電線は、高周波を流すことを想定して設計されていません。そのため、高周波を流すと電線がアンテナの役目をし、電磁波を発してしまう問題があります(いわゆる漏れ電波と呼ぶそうです)。そして2つめにはその周波数帯が短波放送、アマチュア無線、航空無線、防災無線等への影響や家電機器の誤作動の懸念もあるということです。さらに、もう1つはヨーロッパでのテストでのことですが、漏れ電波からパケットの盗聴もできてしまったようです。このように技術面でクリアしなければならない問題が残されているのです。
こうした問題をクリアしようとモデムメーカーは開発を急いでいて、早ければ2006年中にも最初のモデムが発売される見通しです7 。

電力線通信を取り巻く状況は決して楽観視できるものではありません。しかし、近い将来実用化されるとするならば、従来のADSLや無線LAN、光ケーブル等既存の通信技術と組み合わせることによって、次世代インターネットの幅をさらに広げてくれる技術となることでしょう!

IP電話・インターネット電話

ここ1,2年で固定電話サービスの様相が大きく様変わりしているのをご存知でしょうか。従来電話回線というとNTTで契約するしか手段がなかったのですが、携帯電話に始まり今やIP電話という選択肢が増えました。

ここでIP電話とインターネット電話サービスの違いを押さえておきたいと思います。厳密な定義は難しいところではありますが、一般的にIP電話は「IPプロトコルを使用したプロバイダや、回線事業者のIP網を利用した電話サービス」を指し、インターネット電話は「インターネットを通じて行うデータ通信サービスでその一つが音声による電話ーサービス」を指します。。端的に述べると、IP電話は電話番号を付与されている電話回線で、インターネット電話は主にPCを利用して通話を行うものです。
IP電話は、いわゆるYahooBBフォンやNTTのフレッツフォンなどのことです。当初、IP電話は、音声が途切れたり、エコーがかかったりしていたようですが、最近ではほとんど一般電話と変わらない品質を得ることができています。また各ISPでもIP電話のサービスを提供し一般電話に比べて安い料金で、場合によっては通話料が無料になります。


図9:IP電話の概略図

今後IP電話に期待されるものとしては、音声サービスに加えTV電話のような映像サービスや複数の人数で行うことができるTV会議サービス等が挙げられます。これらは従来の固定電話サービスでも提供されてはいましたが、より低価格で提供することが可能になれば、新たなビジネスチャンスにつながるのではないでしょうか。一方、最近注目されているインターネット電話はSkype(スカイプ)8です。すでにご利用になっている方も多いのではないでしょうか。

SkypeはSkype Technologies社が開発・公開している、P2P技術を応用した無料音声通話アプリケーションで、ユーザー同士の通話は世界中どこでも無料でできます。またSkypeOutという有料オプションで一般電話回線に発信が可能でSkypeInで(同じく有料オプション)一般電話回線からの着信が可能になります(SkypeInは日本では認可されていない)。

Skypeの優れているところはその音質です。Skypeはインターネット電話でありながら、その音質は一般電話と引けを取らないほど高いのです 9。普通このようなサービスは送信側、受信側を管理する、サーバーを必要としますが、Skypeはそのような管理サーバーは存在しません。その代わりP2P技術を使い、各ユーザーPCがネットワーク全体を見ながら自分自身がサーバーに切り替わったりすることを自動的に行うことにより、負荷分散を図り、安定した回線品質をキープしつつ100万人の同時利用にも耐えることができるようになっています。また、最近公開された新しいバージョンのSkypeではビデオを併用した会話も可能となり、既存のテレビ電話などにも迫るなど、ますますその活躍の場を広げてきているのです。
このような高品質な通話が可能になったのはアプリケーションの作りによるところも大きいのですが、なんと言ってもネットワークインフラの整備、PCの性能アップなど、さまざまな技術の仕様化等が関係しているといえるでしょう。そうした意味からもこのSkypeはWeb2.0の一つと言えるのではないでしょうか。
そして今後は家庭やオフィスの通信基幹サービスとして需要が高まり、また無線LANと融合するならばユビキタス社会における重要なデバイスとしてその確固たる地位を築くものと期待できるのです。

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